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東京地方裁判所 昭和44年(特わ)59号 判決

本籍

東京都文京区湯島三丁目四十一番地

住居

東京都文京区湯島三丁目四十五番十一号

会社役員

北岡茂美

大正二年二月二十五日生

右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官秋田清夫出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役六月および罰金弐千万円に処する。

被告人が右罰金を完納することができないときは、

金五万円を一日に換算した期間、被告人を労役場に

留置する。

この裁判確定の日から二年間右懲役刑の執行を猶予

する。

理由

(罪となる事実)

被告人は、東京都文京区湯島三丁目四十五番十一号に店舗を設け、三共社眼鏡商会の名称で眼鏡、光学器等の卸売業を営み、右事業による事業所得を得ていたほか、自己所有の株式の配当による配当所得、割引債券の償還差金等による雑所得等を得ていたものであるが、自己の所得税を免れる目的をもつて、右卸売業の売上げの一部を除外して簿外預金、貸付信託を蓄積し、あるいは棚卸の一部を除外する等の不正な方法により、所得を秘匿したうえ、

第一、昭和四十年分の実際課税所得金額が、五千六百五十一万五千六百円であつたのにかかわらず、昭和四十一年三月十五日、東京都文京区本郷五丁目十八番三号所在の所轄本郷税務署において、同税務署長に対し、課税所得金額が、三百十三万八千四百円で、これに対する所得税額が九十万三千三百六十円である旨の虚偽の確定申告書を提出し、もつて、同年分の正規の所得税額三千三百四十一万六千七百八十円と右申告税額との差額三千二百五十一万三千四百二十円を法定の納期限までに納付しないで免れ、

第二、昭和四十一年分の実際課税所得金額が、六千二百五十七万四千三百円であつたのにかかわらず、昭和四十二年三月十四日、前記本郷税務署において、同税務署長に対し、課税所得金額が、六百四十五万九千九百円で、これに対する所得税額が、二百二十九万九千九百四十円である旨の虚偽の確定申告書を提出し、もつて同年分の正規の所得税額三千七百六十五万千五百九十円と右申告税額との差額三千五百三十五万千六百五十円を法定の納期限までに納付しないで免れ

たものである。

(判示各事業年度の所得の確定の内容は、別表第一、第二の修正損益計算書記載の、課税総所得金額ならびに税額等の計算内容は別表第三の税額計算書記載のとおりである。)

(証拠の標目)

一、被告人の当公判廷における供述

一、被告人の検察官に対する供述調書(七通)

一、被告人の大蔵事務官に対する質問てん末書

一、被告人の上申書(十三通)

一、大蔵事務官稲垣信夫作成の売上調査書、仕入調査書、棚卸調査書、経費調査書、前払費用等調査書、未払費用等調査書、昭和三十九年分所得金額調査書、固定資産および減価償却費調査書、借入金調査書、雑収入調査書、雑所得調査書、電話聴取書、脱税額計算書(二通)

一、大蔵事務官大沼三郎作成の有価証券調査書

一、大蔵事務官森猪久居作成の現金有価証券等現在高検査てん末書

一、大蔵事務官高野繁作成の証明書

一、長尾淳一郎の残高証明書(六通)および証明書(二通)

一、浅井周策の残高証明書および証明書

一、佐々木明(三通)、永田達雄(三通)、池田功(三通)横塚文彦、鈴木辰郎(三通)、株式会社三井銀行巣鴨支店、本田芳通、坂本成道の各残高証明書

一、本田芳通、坂本成道の利息支払証明書

一、北岡典子、桜井昭一(二通)、藤原光雄、片山昌一、松澤和男、吉澤栄次郎、松永喜芳、小野瀬節子の各検察官に対する供述調書

一、片山昌一、高田栄、鈴木ノブエ、松澤和男、木村礼子(二通)、松永喜芳、藤岡和雄、北岡典子の各大蔵事務官に対する質問てん末書

一、大石文平、土屋誠一、水木勉、井戸武義の各上申書

一、伴達也の証明書

一、落合清隆の「株式の異動および支払配当金額について」と題する書面(四十通)

一、中央信託銀行株式会社(三通)、駒田保太郎の各「株式の異動、増資払込および支払配当金照会に対する回答」と題する書面

一、植村泰尚の「顧客勘定元帳および信用取引約定帳の写の提出について」と題する書面

一、関湊の「学校債券の引受額及び支払利子等に対する照会についての回答」と題する書面

一、検察事務官小岩清作成の電話聴取書

一、押収してある以下の証拠物(いずれも当庁昭和四十四年押

第九八〇号の証拠物でかつこ内の数字はその符号番号である。)約束手形等一袋(1)、貸家賃借契約書等一袋(2)、貸室賃貸借契約書等一袋(3)、メモ等一袋(4)、領収書綴五冊(5)、会社設立関係等書類一袋(6)、建築物確認通知書等一袋(7)、領収証等一袋(8)、印鑑等一袋(9)、サングラス仕入日記帳三冊(10の1、2、3)、フアイルブツク二冊(11、14)、B四版板目綴一綴(12)、綜合カタログ(13)、元帳三綴(15、16、17)、金銭出納帳一綴(18)、金銭出納帳一冊(19)、仕入日記帳三綴(20、21、22)、売上日記帳八綴(23、24、25、27、29、30、31、98)、日記帳一綴(26)、四一年度日記帳二綴(28、32)、集計用紙八綴(33、34、35、36、37、38、39、40)、セールス別手持在庫表一綴(41)、棚卸在庫表一綴(42)、棚卸表二綴(43、44)、伝票等綴三綴(45、46、47)、出庫伝票綴二十綴(48ないし62、120、121、149、150、151)、出金伝票および領収書等二十一包(63ないし82、103)、領収証等一袋(83)、請求書等八袋(84、104、105、106、107、136、137、140)、売上帳一綴(85)、営四発注書一冊(86)、給与計算書等一袋(87)、賃金台帳三綴(88、89、90)、社員採用案内等その他メモ一袋(91)、領収書等五袋(92、94、95、96、119)、売掛金明細等一袋(93)、小切手帳控等一袋(97)、納品書および領収書等三袋(99、100、101)、税金関係領収書等一袋(102)、伝票綴一綴(108の1)、請求書等四綴(108の2、109、110、111)、出金伝票綴十二綴(112ないし116、129ないし135)、領収書等二包(117、118)、仕訳月計伝票綴七綴(122ないし128)、請求書控綴二袋(138、139)、減価償却計算表一袋(141)、所得税確定申告書三枚(142、143、144、)、所得税青色申告決算書類三綴(145、146、147)、フアイルブツク一綴(148)、出庫伝票等控綴七綴(152ないし158)、プリンスホテル展示会集計表等一綴(159)、普通預金通帳(160)

(法令の適用)

被告人の判示各所為は、いずれも所得税法第二百三十八条に該当するので、情状により懲役刑と罰金刑を併科するが、以上の各事実は刑法第四十五条前段の併合罪であるから、懲役刑については同法第四十七条本文、第十条により、犯情の重い判示第二の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で、罰金刑については、同法第四十八条第二項により、その合算額の範囲内で、被告人を懲役六月および罰金二千万円に処し、右罰金を完納できないときは刑法第十八条により金五万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置することとするが、諸般の情状を考慮し同法第二十五条第一項により本裁判確定の日から二年間右懲役刑の執行を猶予することとする。

よつて主文のとおり判決する。

(裁判官 守谷芳)

別表第一

修正損益計算書

北岡茂美

自 昭和40年1月1日

至 昭和40年12月31日

〈省略〉

〈省略〉

別表第二

修正損益計算書

北岡茂美

自 昭和41年1月1日

至 昭和41年12月31日

〈省略〉

〈省略〉

別表第三

税額計算書

〈省略〉

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